幽夢影 / 巻下・酒は好むべくも座を罵るべからず
酒可好不可罵座,色可好不可傷生,財可好不可昧心,氣可好不可越理。
新字:酒可好不可罵座,色可好不可傷生,財可好不可昧心,気可好不可越理。
書き下し
酒は好むべくも座を罵るべからず、色は好むべくも生を傷るべからず、財は好むべくも心を昧ますべからず、氣は好むべくも理を越ゆべからず。
現代語訳
酒は好んでもよいが、酔って宴席の人を罵ってはなりません。色事は好んでもよいが、身を損なってはなりません。財は好んでもよいが、良心をくらませてはなりません。意気は好んでもよいが、道理を踏み越えてはなりません。
解説
古くから人を迷わす四つとされる酒・色・財・気を取り上げ、どれも好むこと自体は認めたうえで、越えてはならない線を示した一則です。罵座は、漢の灌夫が酒に酔って宴席で人を罵り、身を滅ぼした故事で知られる言葉です。気は意気や負けん気のことで、強すぎれば争いのもとになります。四つを一律に禁じるのではなく、楽しみは楽しみとして残しつつ一線を引くところに、張潮の現実的な人間観があります。欲を全部断つのは難しくても、どこから先が害になるかを自分で決めておくことはできます。付き合いの酒やお金の話で迷ったときの、分かりやすい物差しになる言葉です。
この章句が説くこと
節制酒色財気修身処世欲
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