言志四録 / 言志耋録 第二百二十条 人道は六経に尽く
天道。都是吉凶悔吝。易也。人情。都是國風雅頌。詩也。政事。都是訓誥誓命。書也。交際。都是恭敬辭讓。禮也。人心。都是感動和樂。樂也。賞罸。都是抑揚褒貶。春秋也。即知人道於六經盡之。
新字:天道。都是吉凶悔吝。易也。人情。都是国風雅頌。詩也。政事。都是訓誥誓命。書也。交際。都是恭敬辞譲。礼也。人心。都是感動和楽。楽也。賞罰。都是抑揚褒貶。春秋也。即知人道於六経尽之。
書き下し
天道は、都て是れ吉凶悔吝にして、易なり。人情は、都て是れ国風雅頌にして、詩なり。政事は、都て是れ訓誥誓命にして、書なり。交際は、都て是れ恭敬辞譲にして、礼なり。人心は、都て是れ感動和楽にして、楽なり。賞罰は、都て是れ抑揚褒貶にして、春秋なり。即ち人道は六経に於て之を尽くすを知る。
現代語訳
天の道は、すべて吉・凶・悔・吝(易の占辞)であり、それが易である。人の情は、すべて国風・雅・頌であり、それが詩経である。政治は、すべて訓・誥・誓・命(書経の文体)であり、それが書経である。人との交際は、すべて恭しさ・敬い・辞退・譲り合いであり、それが礼である。人の心は、すべて感動し和らぎ楽しむことであり、それが楽である。賞罰は、すべて抑えたり揚げたり褒めたり貶したりすることであり、それが春秋である。つまり、人の道は六経(易・詩・書・礼・楽・春秋)に言い尽くされていることがわかる。
解説
六経それぞれが人間の営みのどの領域を扱っているかを、一対一で対応させた一条です。天道の吉凶は易、人情の起伏は詩、政治の命令は書、人付き合いの作法は礼、心の感動は楽、賞罰の判断は春秋。こう並べると、六経は古い書物の寄せ集めではなく、人の生きる世界を分担して描いた一揃いの見取り図になります。一斎は昌平坂学問所で経書を講じた儒官ですが、経書を読むことは結局、天と人と社会の全体を学ぶことだと考えていたのがわかります。次条では同じ枠組みで経と史の関係を論じています。自分の学びがどの領域に偏っているか、全体を見渡して点検する視点として読むこともできます。
この章句が説くこと
六経学問人道教養経書
関連する章句
-
歎異抄・第十二条経釈を読み学せざる輩、往生不定の由のこと。この条、すこぶる不足言の義と言いつべし。 他力真実の旨を明かせる諸の聖教は、本願を信じ念仏を申さば仏に成る、そのほか何の学問かは往生の要なるべきや。 まことにこの理に迷えらん人は、いかにもいかにも学問して、本願の旨を知るべきなり。 経釈を読み学すといえども、聖教の本意を心得ざる条、もっとも不便のことなり。
-
人物志・體別夫れ學は材を成す所以なり、疏は情を推す所以なり。偏材の性は、移轉すべからず。
-
言志四録・南洲手抄学之を古訓に稽へ、問之を師友に質すは、人皆之を知る。学必ず之を躬に学び、問必ず諸を心に問ふは、其れ幾人有らんか。
-
言志四録・南洲手抄朝にして食はずば、昼にして饑う。少うして学ばずば、壮にして惑ふ。饑うるは猶忍ぶ可し、惑ふは奈何ともす可からず。
-
論語・為政篇子曰く、異端を攻むるは、斯れ害のみ。
-
説苑・建本子思曰わく、学は才を益す所以なり、礪は刃を致す所以なり。吾嘗て幽処して深く思うも、学の速やかなるに若かず。吾嘗て跂ちて望むも、高きに登りて博く見るに若かず。故に風に順いて呼べば、声疾しきを加えざれども聞く者衆し。丘に登りて招けば、臂長きを加えざれども見る者遠し。故に魚は水に乗り、鳥は風に乗り、草木は時に乗る。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る