言志四録 / 言志耋録 第二百十二条 虚実を両忘して自ら来るに任す
勿衒虛名以爲實。當謝實名以爲虛。當兩忘虛實。以任自來。
新字:勿衒虚名以為実。当謝実名以為虚。当両忘虚実。以任自来。
書き下し
虚名を衒ひて以て実と為すこと勿れ。当に実名を謝して以て虚と為すべし。当に虚実を両忘して、以て自ら来るに任すべし。
現代語訳
中身のない名声をひけらかして実質があるように見せてはならない。むしろ実質の伴った名声でさえ辞退して、虚名と見なすくらいがよい。さらには虚と実とをともに忘れて、自然にやって来るものに任せるべきである。
解説
名をめぐる考察を三段階で深めた条です。第一に、虚名を誇って実があるように見せてはならない。これは誰もが認める戒めです。第二に、実の伴った名さえ辞して虚とみなせと言います。前々条の「実有るの名は必ずしも謝せず」と一見矛盾しますが、ここでは名に心を留めないための修養として述べているのでしょう。第三に、最後は虚実の区別そのものを忘れ、来るものに任せる。名を求めることも避けることも超えた、執着のない境地です。前条の「わざと実を晦ますも私心」とも通じます。評価を気にする段階、評価を疑う段階を経て、評価から自由になる段階へ。自分がいまどこにいるかを考える目安になりそうです。
この章句が説くこと
虚名名と実無心執着両忘
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