言志四録 / 言志後録 第百二十六条 虚にして実
胸中無物。虛而實也。萬物皆備。實而虛也。
新字:胸中無物。虚而実也。万物皆備。実而虚也。
書き下し
胸中物無きは、虚にして実なり。万物皆備はるは、実にして虚なり。
現代語訳
胸の中に何のわだかまりもないのは、虚でありながら実である。万物の理がすべて自分に備わっている(『孟子』)のは、実でありながら虚である。
解説
心の虚と実を対にした短い一条です。胸中に何もない、つまり私心やわだかまりがないのは、一見空っぽのようですが、だからこそ何でも受け容れ正しく応じられる充実した状態です。反対に、『孟子』尽心上篇の「万物皆我に備はる」のように、あらゆる理が心に備わっているのは充実の極みですが、それは特定の物に占められていない、とらわれのない状態でもあります。空っぽであることと満ちていることが同じ心の二つの面だという見方は、前の山水の体用の条とも呼応しています。先入観を捨てて相手の話を聞くことと、豊かな経験や知識を持つことは矛盾しないのか。そんな問いを考えるときの手がかりになる言葉です。
この章句が説くこと
虚実無心万物皆備心の本体とらわれ
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