言志四録 / 言志耋録 第二百三条 小しく才有る者は人を軽侮す
小有才者。往往好輕侮人。調咲人。可謂失德矣。受侮者。不徒已。必憾而譜之。是我自有也。吾黨少年。勿染此習。可。
新字:小有才者。往往好軽侮人。調咲人。可謂失徳矣。受侮者。不徒已。必憾而譜之。是我自有也。吾党少年。勿染此習。可。
書き下し
小しく才有る者は、往往にして好んで人を軽侮し、人を調笑す。徳を失ふと謂ふべし。侮りを受くる者は、徒に已まず、必ず憾みて之を譜す。是れ我自ら有するなり。吾が党の少年、此の習ひに染まること勿くして、可なり。
現代語訳
少しばかり才のある者は、しばしば好んで人を軽んじ侮り、からかって笑いものにする。これは徳を失っていると言うべきである。侮られた者は、そのまま済ませはしない。必ず恨んで、そのことを心に刻みつけておく。それは自分が自ら招いたものである。わが門下の若者たちは、この悪習に染まらないようにするのがよい。
解説
門下の若者たちに向けた、具体的な戒めの条です。少し才気がある者ほど、人を見下したり、からかって笑いものにしたりしがちです。一斎はそれを「徳を失ふ」とはっきり断じます。からかった側は冗談のつもりでも、された側は決して忘れず、恨みを心に書き留めておく。「譜す」とは帳面に記すように刻みつけることでしょう。そしてその恨みは、ほかならぬ自分が招いたものだと言います。昌平坂学問所で才気ある書生を数多く見てきた一斎の、実感のこもった忠告です。職場での軽口やいじりも、言った側が思う以上に相手に残ります。才能のある若手を育てる立場の人にとって、見過ごせない指摘でしょう。
この章句が説くこと
軽侮徳恨み言動の慎み若者の戒め
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