言志四録 / 南洲手抄
雅事多是虚、勿謂之雅而耽之。俗事却是實、勿謂之俗而忽之。
新字:雅事多是虚、勿謂之雅而耽之。俗事却是実、勿謂之俗而忽之。
書き下し
雅事多くは是れ虚なり、之を雅と謂うて之に耽ること勿れ。俗事却て是れ実なり、之を俗と謂うて之を忽にすること勿れ。
現代語訳
風雅な事は、多くは中身のない虚なものだ。「雅(みやび)」だからといって、それにふけってはならない。俗な(世俗の日常の)事は、かえって実のあるものだ。「俗っぽい」からといって、それをおろそかにしてはならない。
解説
「雅(風雅)」と「俗(日常)」の価値を、あえて逆転させて見せた一条です。詩歌や趣味といった風雅な事は、見た目は高尚でも中身は空虚なことが多い。逆に、炊事や仕事といった世俗の日常の事こそ、実のある大切なものだ、と一斎は言います。だから雅事に溺れず、俗事を軽んじるな、と。高尚に見えるものを持ち上げ、地味な日常を軽く見がちな私たちの価値観を、鋭く問い直します。人生を支えているのは、華やかな非日常ではなく、地道な日々の営み。足元の「俗事」にこそ実があると気づかせる、地に足のついた一条です。
この章句が説くこと
雅と俗日常の価値虚と実地に足
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