言志四録 / 言志耋録 第百九十六条 柔軟なる者は怕るべし
凡剛强者易與。柔軟者可怕。質素者永存。華飾者剝落。人之與物皆然。
新字:凡剛強者易与。柔軟者可怕。質素者永存。華飾者剥落。人之与物皆然。
書き下し
凡そ剛強なる者は与し易く、柔軟なる者は怕るべし。質素なる者は永く存し、華飾なる者は剥落す。人と物と皆然り。
現代語訳
およそ剛く強いものは相手にしやすく、柔らかくしなやかなものは恐るべきである。飾り気のない素朴なものは長く残り、華やかに飾ったものは剥げ落ちる。人も物もみなそうである。
解説
二つの対比で、見かけの強さや美しさの逆説を説いた条です。硬く強いものは力の向きが明らかなので対処しやすいが、柔らかいものは形を変えて受け流すため、かえって手ごわい。これは『老子』の「柔弱は剛強に勝つ」や、水の喩えに通じる考え方です。また、素朴な材はいつまでも保つが、塗りや金箔で飾ったものは剥がれ落ちる。一斎はそれを人にも当てはめます。声高で押しの強い人より、穏やかで芯のある人のほうが粘り強く、派手な才気より地味な実直さのほうが長く信頼を保つ。交渉相手を見るときも、自分のあり方を考えるときも、外見の強さや華やかさに惑わされない視点を与えてくれます。
この章句が説くこと
柔よく剛を制す質素華美持続人を見る目
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