言志四録 / 言志耋録 第百八十九条 人事を経歴するは活書を読む
經歷人事。即是讀活書也。故沒字老農。亦或有自得處。先民有言。詢于芻蕘。讀書人休輕蔑之。
新字:経歴人事。即是読活書也。故没字老農。亦或有自得処。先民有言。詢于芻蕘。読書人休軽蔑之。
書き下し
人事を経歴するは、即ち是れ活書を読むなり。故に没字の老農も、亦或は自得の処有り。先民言へる有り、「芻蕘に詢る」と。読書人之を軽蔑すること休れ。
現代語訳
世の中の事柄を実際に経験することは、そのまま生きた書物を読むことである。だから文字を知らない年老いた農夫にも、自分でつかみ取った境地があることがある。昔の賢人の言葉に「草刈りや木こりにも意見を尋ねる」(『詩経』)とある。書物を読む人は、こうした人々を軽んじてはならない。
解説
書物を学問の中心とする儒者でありながら、一斎は経験そのものを「活書」、生きた書物と呼びます。文字を読めない老農でも、長年土と天候に向き合ううちに、書物では得られない道理を体得していることがある。「芻蕘に詢る」は『詩経』大雅・板の句で、草刈りや木こりのような身分の低い者にも意見を求めよという意味です。一斎は、読書人が知識を鼻にかけて実地の人を見下すことを戒めています。言志録以来、読書と実践の関係は一斎の繰り返す主題です。現場を知らない本社や専門家が、現場の声を軽んじていないか。学歴や肩書きと、経験から得た知恵とを公平に見ることの大切さを考えさせます。
この章句が説くこと
活書経験読書謙虚現場の知恵
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