言志四録 / 言志耋録 第百八十八条 争心起こる時は恕を以て克つ
妄念起時。宜以忠字克之。爭心起時。宜以恕字克之。
新字:妄念起時。宜以忠字克之。争心起時。宜以恕字克之。
書き下し
妄念起こる時は、宜しく忠の字を以て之に克つべし。争心起こる時は、宜しく恕の字を以て之に克つべし。
現代語訳
よこしまな雑念が起こったときは、「忠」の字によってこれに打ち克つのがよい。人と争う心が起こったときは、「恕」の字によってこれに打ち克つのがよい。
解説
前条の忠恕を、心の乱れへの処方として具体化した条です。「妄念」は根拠のない欲望や邪念、とりとめのない想念を指します。これには、自分のなすべきことにまごころを尽くす「忠」で対する。目の前の務めに心を集中させれば、雑念の入り込む隙がなくなるということでしょう。一方、人と張り合い、言い負かしたくなる「争心」には、相手の立場に身を置いて考える「恕」で対する。相手にも事情があると思い至れば、争う気持ちは和らぎます。内に向かう乱れには忠、外に向かう乱れには恕と、使い分けが明快です。会議で感情的になりかけたとき、相手の側から状況を眺め直すひと呼吸を持つ、そんな実践にもつながります。
この章句が説くこと
忠恕妄念克己心術
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