言志四録 / 言志耋録 第百五十八条 老成の人を侮る無かれ
無侮老成人。無弱孤有幼。眞是盤庚明戒。今之才人。往往侵此訓。可警也。
新字:無侮老成人。無弱孤有幼。真是盤庚明戒。今之才人。往往侵此訓。可警也。
書き下し
「老成の人を侮ること無かれ、孤有幼を弱しとすること無かれ」とは、真に是れ盤庚の明戒なり。今の才人、往往此の訓を侵す。警むべきなり。
現代語訳
「経験を積んだ老練な人を侮ってはならない。身寄りのない者や幼い者を軽んじてはならない」というのは、まことに盤庚(殷の王。『書経』盤庚篇)の明らかな戒めである。今の才気ある人は、しばしばこの教えを犯している。戒めとすべきである。
解説
『書経』盤庚篇で、殷の王盤庚が都を移すにあたり臣下に告げた言葉を引いた一条です。経験を積んだ年長者を侮らず、身寄りのない者や幼い者を軽んじるな、という戒めを、一斎は「今の才人」がしばしば犯していると指摘します。才気のある人ほど自分の頭の回転に頼り、年長者の経験を古くさいと見下し、弱い立場の者を眼中に置かなくなりがちです。八十を超えた一斎自身が老成の人の側にいたことを思うと、実感のこもった苦言とも読めます。変化の速い時代には若い才能が重んじられますが、その陰で経験の蓄積や弱い立場の声が切り捨てられていないかを考える手がかりになるでしょう。
この章句が説くこと
敬老経験才人謙虚弱者への配慮
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