言志四録 / 言志耋録 第百八十七条 忠は己に責め恕は人に施す
忠字。宜責於己。勿責諸人。恕字。宜施於人。勿施諸己。
書き下し
忠の字は、宜しく己に責むべし。諸を人に責むること勿れ。恕の字は、宜しく人に施すべし。諸を己に施すこと勿れ。
現代語訳
「忠」(まごころを尽くすこと)の字は、自分に対して求めるべきであって、他人に求めてはならない。「恕」(相手を思いやり許すこと)の字は、他人に対して施すべきであって、自分に施して甘やかしてはならない。
解説
『論語』里仁篇で曾子が「夫子の道は忠恕のみ」と述べたように、忠と恕は孔子の教えの核心とされます。朱子は「己を尽くす之を忠と謂ひ、己を推す之を恕と謂ふ」と注しました。一斎はこの二字の向け先をはっきり分けます。まごころを尽くせという厳しさは自分に向け、他人には求めない。思いやって許す寛さは他人に向け、自分には向けない。人はとかく逆をやり、他人には誠実さを要求し、自分の失敗には寛大になりがちです。自分に厳しく人に寛容であれという教えを、儒学の中心概念で端的に言い表しています。部下に献身を求める前に自分が尽くしているか、自分への言い訳を許していないかを省みる材料になります。
この章句が説くこと
忠恕克己寛容自律
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