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言志四録 / 言志耋録 第百八十六条 異を好みて同を好まず

凡人喜同而不喜異。余則好異而不好同。何也。同異雖如相背。而其相資者。必在於相背者。假如水火。水生物。火滅物。水不生物。則火亦不能滅之。火不滅物。則水亦不能生之。故水火相逮。而後萬物生生無窮也。此理不可不知。

新字:凡人喜同而不喜異。余則好異而不好同。何也。同異雖如相背。而其相資者。必在於相背者。仮如水火。水生物。火滅物。水不生物。則火亦不能滅之。火不滅物。則水亦不能生之。故水火相逮。而後万物生生無窮也。此理不可不知。

書き下し

凡そ人は同を喜びて異を喜ばず。余は則ち異を好みて同を好まず。何ぞや。同異は相背くが如しと雖も、而も其の相資くる者は、必ず相背く者に在り。仮如へば水火のごとし。水は物を生じ、火は物を滅す。水物を生ぜざれば、則ち火も亦之を滅する能はず。火物を滅せざれば、則ち水も亦之を生ずる能はず。故に水火相逮びて、而る後に万物生生して窮まり無きなり。此の理知らざるべからず。

現代語訳

おおよそ人は自分と同じものを喜び、異なるものを喜ばない。私はむしろ異なるものを好み、同じものを好まない。なぜか。同と異は互いに背き合うように見えるが、互いに助け合うものは、必ずその背き合うもののうちにあるからである。たとえば水と火のようなものである。水は物を生かし、火は物を滅ぼす。水が物を生かさなければ、火もそれを滅ぼすことはできない。火が物を滅ぼさなければ、水もまたそれを生かすことはできない。だから水と火が互いに働き合ってこそ、万物は次々と生まれて尽きることがないのである。この道理は知っておかねばならない。

解説

二条前の「他山の石」を、陰陽の理によって根拠づけた条です。人は自分と同じ意見や気質を好むが、一斎はあえて異なるものを好むと宣言します。その理由として水と火の比喩を引きます。生かす水と滅ぼす火は正反対ですが、滅ぼすものがなければ新たに生まれる余地もなく、生まれるものがなければ滅ぼす対象もない。『易』説卦伝の「水火相逮ぶ」を踏まえ、対立するものが互いを成り立たせてこそ万物は生々して尽きないと説きます。易学に通じた一斎の世界観がよく表れています。意見の対立を避けて同調を求めがちな組織にとって、反対意見がむしろ全体を生かすという視点を与えてくれます。

この章句が説くこと

同異陰陽対立と調和多様性生生

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