言志四録 / 言志耋録 第百七十八条 似て非なる者を視て己を省る
執拗。似凝定。輕遽。似敏捷。多言。似博識。浮薄。似才慧。視人之似者。以反省己。可也。
新字:執拗。似凝定。軽遽。似敏捷。多言。似博識。浮薄。似才慧。視人之似者。以反省己。可也。
書き下し
執拗は、凝定に似たり。軽遽は、敏捷に似たり。多言は、博識に似たり。浮薄は、才慧に似たり。人の似たる者を視て、以て己を反省して、可なり。
現代語訳
頑固さは、どっしりとした落ち着きに似ている。軽はずみは、機敏さに似ている。口数の多さは、博識に似ている。軽薄さは、才知に似ている。人のこうした似て非なるところを見て、それによって自分を反省するのがよい。
解説
長所と短所は紙一重だという観察を、四つの対で示した条です。頑固な人は信念が固いように、せっかちな人は仕事が速いように、よくしゃべる人は物知りのように、口の軽い人は頭の回転が速いように見えます。『孟子』には孔子が「似て非なる者を悪む」と言ったとあり、一斎もその系譜に立っています。ただしこの条の力点は、人を見分けることより「以て己を反省す」にあります。他人の似て非なる点に気づいたら、自分もまた同じ取り違えをしていないかを省みよというのです。自分の「決断力」が実は執拗ではないか、「スピード感」が軽率ではないか。評価の場で他人に向ける目を自分にも向ける材料になります。
この章句が説くこと
似て非なるもの反省人を見る目自己省察
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