言志四録 / 言志耋録 第百七十二条 往事を忘れざるは厚徳
人當不忘往事。是爲厚德。
新字:人当不忘往事。是為厚徳。
書き下し
人は当に往事を忘れざるべし。是れを厚徳と為す。
現代語訳
人は過ぎ去った昔の事(受けた恩や古い交わり)を忘れてはならない。これを厚い徳というのである。
解説
わずか十二字の条ですが、人との関わりを説く耋録の一連の条の入口に置かれています。「往事」とは、自分が受けた恩義、苦しい時に助けてくれた人、かつての交わりのことでしょう。人は境遇が変わると昔を忘れがちで、とくに立場が上がると、下積みの頃に世話になった人を顧みなくなります。一斎はそれを忘れないことを「厚徳」、つまり人柄の厚みそのものだと言います。八十歳を越えて若き日を振り返る老儒の実感がこもった言葉です。成果を上げた後にこそ、ここまで来る間に誰の手を借りたかを思い返してみる。それが人の信頼を長く保つ土台になるのかもしれません。
この章句が説くこと
厚徳恩義忘れないこと人間関係
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