言志四録 / 言志耋録 第百六十六条 略説して思ひ得しむ
說事理。固欲使人了解。故我宜先略說之。使渠思而得之。不然。我過詳悉之。則渠不致思。郤不得深意。
新字:説事理。固欲使人了解。故我宜先略説之。使渠思而得之。不然。我過詳悉之。則渠不致思。郤不得深意。
書き下し
事理を説くは、固より人をして了解せしめんと欲す。故に我宜しく先づ略して之を説き、渠をして思ひて之を得しむべし。然らずして、我過ぎて之を詳悉すれば、則ち渠思ひを致さず、却って深意を得ず。
現代語訳
物事の道理を説くのは、もちろん人に理解させたいからである。だから自分はまず要点だけをかいつまんで説き、相手に自分で考えてつかませるのがよい。そうせずに、こちらが詳しく説明しすぎると、相手は考えをめぐらせず、かえって深い意味をつかめない。
解説
道理を教えるときは、すべてを説明し尽くさず、要点だけ示して相手に考えさせよ、という一条です。『論語』述而篇の「憤せずんば啓せず、悱せずんば発せず」、すなわち自分で考えあぐねている者でなければ導かない、という孔子の教授法に通じます。丁寧に説明しすぎると、相手は理解した気になるだけで自分の頭を使わず、かえって深い意味に届かない。長年門人を指導した一斎の、実践から得た知恵でしょう。前の数条で見てきた訓戒の心得を、知的な教授の場面に広げたものとも読めます。部下の育成で、答えを与えるのか問いを渡すのか、その加減を考えるうえで手がかりになる一条です。
この章句が説くこと
教育人を育てる考える力教授法
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