言志四録 / 言志耋録 第百六十五条 親しむべくして狎るべからず
火可親而不可狎。水可愛而不可溺。待妻妾。宜著如是看。
書き下し
火は親しむべくして狎るべからず。水は愛すべくして溺るべからず。妻妾を待つには、宜しく是くの如き看を著くべし。
現代語訳
火は身近に親しむべきものだが、なれなれしく扱ってはならない。水は愛すべきものだが、溺れてはならない。妻や妾に接するには、このような見方をもつのがよい。
解説
前条の「夫婦の別」に続き、火と水のたとえで、身近な人との距離の取り方を説いた一条です。火は暖を取り煮炊きをするのに欠かせないが、侮って扱えば火傷や火事になる。水は命を養うが、溺れれば命を奪う。どちらも生活に不可欠でありながら、節度を失えば害をなすものです。妻妾に接するときも同じ見方を持て、と一斎は言います。妾という言葉に表れているように江戸時代の家族観を前提にした条ですが、その核にあるのは、大切な相手ほど慣れて粗略に扱ったり、情に溺れて判断を誤ったりしがちだという観察です。近しい人、信頼する部下との関係にも通じる、距離感の心得として読めるでしょう。
この章句が説くこと
節度親しき仲の礼夫婦距離感比喩
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