言志四録 / 言志耋録 第百五十九条 平常の話中に警戒を寓す
與少壯書生語時。若加警戒。則聽者厭。但就平常話中。偶寓警戒。則於彼有益。我亦不至煩瀆。
新字:与少壮書生語時。若加警戒。則聴者厭。但就平常話中。偶寓警戒。則於彼有益。我亦不至煩瀆。
書き下し
少壮の書生と語る時、若し警戒を加ふれば、則ち聴く者厭ふ。但だ平常の話中に就きて、偶々警戒を寓すれば、則ち彼に於て益有り、我も亦煩瀆に至らず。
現代語訳
若い書生と話をするとき、もし改まって戒めを加えると、聞く者はいやがる。ただ普段の会話の中で、ときおり戒めをそれとなく込めるならば、相手にとって益があり、自分もくどくどしく煩わしくなることがない。
解説
ここから数条、人を教え戒めるときの心得が続きます。この条は、若い学生に説教めいた戒めを加えれば聞く側はうんざりするだけだが、普段の世間話の中にときおりさりげなく戒めを織り込めば、相手のためになり、自分も口うるさくならずに済む、というものです。長く昌平坂学問所で多くの門人を育てた一斎の、教育者としての実感が表れています。改まった訓戒は、相手に身構えさせ、内容より「説教された」という印象だけを残しがちです。何気ない会話の中の一言のほうが、かえって長く心に残ることがあります。部下や後輩に何かを伝えたいとき、場面と語り口の選び方を考える手がかりになる一条です。
この章句が説くこと
訓戒教育人を育てる話し方
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