言志四録 / 言志耋録 第百五十七条 天定まりて人に勝つ
無罪而得愆者。非常人也。身屈於一時。而名伸於後世。有罪而免愆者。奸侫人也。得志於一時。而名辱於後世。古謂天定而勝人。是也。
書き下し
罪無くして愆を得る者は、非常の人なり。身は一時に屈すれども、名は後世に伸ぶ。罪有りて愆を免るる者は、奸佞の人なり。志を一時に得れども、名は後世に辱めらる。古に「天定まりて人に勝つ」と謂ふは、是れなり。
現代語訳
罪がないのに咎めを受ける者は、並外れた人物である。その身は一時は屈するが、名は後世に伸びる。罪があるのに咎めを免れる者は、よこしまでへつらう人物である。一時は思いを遂げるが、名は後世に辱められる。昔の人が「天の定めが落ち着けば、ついには人の力に勝つ」と言ったのは、このことである。
解説
無実の罪を着せられる者と、罪を犯しながら逃れる者を対比し、長い目で見れば天の裁きが人の作為に勝つと説いた一条です。「天定まりて人に勝つ」は、『史記』伍子胥列伝で申包胥が語った「人衆ければ天に勝ち、天定まれば亦能く人を破る」を踏まえた言葉と考えられます。一時は人の力が道理をねじ曲げても、時が経てば正しさは明らかになるというのです。前の二条の人材論に続けて読むと、不遇な非常の人への励ましとも受け取れます。不当な評価や処遇を受けたとき、短期の結果と長期の評価を分けて考えること、また人を裁く側に立つとき、その判断が後にどう見られるかを思うことの材料になります。
この章句が説くこと
天冤罪名誉長期的視点奸佞
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