言志四録 / 言志耋録 第百五十五条 奇花異草の不幸
草木固山野之物。在山野。則得其所。而不煩人灌漑。會有奇花異草。生於其間。則花匠拔取。以爲盆翫。晉之王侯。第於花匠爲幸。而花卉則爲不幸。人事亦或類此。
新字:草木固山野之物。在山野。則得其所。而不煩人灌漑。会有奇花異草。生於其間。則花匠抜取。以為盆翫。晋之王侯。第於花匠為幸。而花卉則為不幸。人事亦或類此。
書き下し
草木は固より山野の物なり。山野に在れば、則ち其の所を得て、人の灌漑を煩はさず。会々奇花異草の其の間に生ずる有れば、則ち花匠抜き取りて、以て盆翫と為し、之を王侯に晋む。第だ花匠に於ては幸と為せども、花卉は則ち不幸と為す。人事も亦或は此に類す。
現代語訳
草木はもともと山野のものである。山野にあれば、その居場所を得て、人に水やりの手間をかけさせることもない。たまたま珍しい花や変わった草がその中に生えると、植木屋がそれを抜き取って鉢植えの慰みものにし、王侯に献上する。それはただ植木屋にとって幸いであるだけで、草花にとっては不幸である。人の世の事柄にも、あるいはこれに似たことがある。
解説
山野に自生する草木は、本来の場所で人手を借りずに育っている。ところが珍しい花が生えると、植木屋に掘り取られて鉢植えにされ、王侯への献上品となる。それは植木屋の得にはなっても、花にとっては不幸だという寓話です。末尾の「人事も亦或は此に類す」が要で、際立った才能をもつ者が見いだされ、権力者のもとに召し出されることが、必ずしも本人の幸福ではないという含みが読み取れます。推挙する側の功名にはなっても、本人は根を断たれて窮屈な鉢に押し込められることがある。人材を抜擢し、配置する立場にある人にとって、それが誰のための登用なのかを考えさせる一条です。
この章句が説くこと
人材抜擢適所寓意幸不幸
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