言志四録 / 言志耋録 第百四十九条 持満の工夫
凡物滿則覆。天道也。勿忘持滿工夫。持滿。謂守其分。守分。斥身之出處。與己之才德。
新字:凡物満則覆。天道也。勿忘持満工夫。持満。謂守其分。守分。斥身之出処。与己之才徳。
書き下し
凡そ物満つれば則ち覆るは、天道なり。持満の工夫を忘るること勿れ。持満とは、其の分を守るを謂ふ。分を守るとは、身の出処と、己の才徳とを斥す。
現代語訳
およそ物は満ちれば傾いてこぼれる。これが天の道理である。満ちたものを保つ工夫を忘れてはならない。「持満」とは、自分の分を守ることをいう。「分を守る」とは、わが身の出処進退と、自分の才能・徳の程度とをわきまえることを指す。
解説
満ちれば覆るという天道を踏まえ、満ちた状態を保つ「持満」の工夫を説いた一条です。『荀子』宥坐篇には、空なら傾き、半ばなら正しく立ち、満ちればひっくり返る「欹器」を孔子が弟子に示した話があり、この条の背景にあると考えられます。一斎は持満を「分を守る」ことだと言い換え、さらにその中身を、身の出処進退と、自分の才能・徳の程度の二つだと具体的に示します。地位や役割が自分の器を超えれば、どこかで覆る。前条の「豫」と同じく、盛んなときにこそ備えるという発想です。成功が続いているとき、自分の立場と力量の釣り合いを見直す手がかりになるでしょう。
この章句が説くこと
持満分出処進退謙虚天道
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