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十善法語 / 巻第八・不貪欲戒

一切世間ニ於テ護持セネハナラヌ法シヤ。一念分ヲ超エ貪欲ニ隨順スレハ。自心ニ背クシヤ。世間ニ背クシヤ。人倫ニ背クシヤ。天道ニ背クシヤ。法性ニ背クシヤ。一言半句ソノ分ヲ超レハ自心ニ背ク。世間ニソムク。人倫ニソムク。天道ニ背ク。法性ニ背ク。一行一作其分ヲ超レハ自心ニ背ク。世間ニ背ク。人倫ニ背ク。天道ニ背ク。法性ニ背クシヤ。此ヲ初ニ愼マネハ。後救フベカラザルニ至ルシヤ。コノ常ヲ守リ分ヲ超ヌコトハ。至テ易キ道ナレトモ。其德ハ廣大ナルコトシヤ。天地ノ道シヤ。萬物ノ情シヤ。古今不易ノ大道シヤ。日月星辰ソノ常アルヲ見ヨ。若常度ヲ違ルハ不吉ノ徵シヤ。四時常アルヲ看ヨ。若時候不順ナルハ灾ノ兆シヤ。山海常アルヲ看ヨ。若山崩レ海涸ルハ不吉ノ兆シヤ。萬物常アルヲ看ヨ。古ヨリ紅ノ雪アサキノ雪ハ不吉ト云コトシヤ。牝雞ノ晨スル雄雞ノヨヒ鳴スルモ不吉ト名ツクルシヤ。元朝ノ亡ルトキ。杜鵑カ上都ニ啼ト云。狐カ宮中ヨリ出タト云コトシヤ。萬般ミナ思テ知ベキシヤ。

新字:一切世間ニ於テ護持セネハナラヌ法シヤ。一念分ヲ超エ貪欲ニ随順スレハ。自心ニ背クシヤ。世間ニ背クシヤ。人倫ニ背クシヤ。天道ニ背クシヤ。法性ニ背クシヤ。一言半句ソノ分ヲ超レハ自心ニ背ク。世間ニソムク。人倫ニソムク。天道ニ背ク。法性ニ背ク。一行一作其分ヲ超レハ自心ニ背ク。世間ニ背ク。人倫ニ背ク。天道ニ背ク。法性ニ背クシヤ。此ヲ初ニ慎マネハ。後救フベカラザルニ至ルシヤ。コノ常ヲ守リ分ヲ超ヌコトハ。至テ易キ道ナレトモ。其徳ハ広大ナルコトシヤ。天地ノ道シヤ。万物ノ情シヤ。古今不易ノ大道シヤ。日月星辰ソノ常アルヲ見ヨ。若常度ヲ違ルハ不吉ノ徴シヤ。四時常アルヲ看ヨ。若時候不順ナルハ災ノ兆シヤ。山海常アルヲ看ヨ。若山崩レ海涸ルハ不吉ノ兆シヤ。万物常アルヲ看ヨ。古ヨリ紅ノ雪アサキノ雪ハ不吉ト云コトシヤ。牝鶏ノ晨スル雄鶏ノヨヒ鳴スルモ不吉ト名ツクルシヤ。元朝ノ亡ルトキ。杜鵑カ上都ニ啼ト云。狐カ宮中ヨリ出タト云コトシヤ。万般ミナ思テ知ベキシヤ。

書き下し

一切世間ニ於テ護持セネハナラヌ法シヤ。一念分ヲ超エ貪欲ニ随順スレハ。自心ニ背クシヤ。世間ニ背クシヤ。人倫ニ背クシヤ。天道ニ背クシヤ。法性ニ背クシヤ。一言半句ソノ分ヲ超レハ自心ニ背ク。世間ニソムク。人倫ニソムク。天道ニ背ク。法性ニ背ク。一行一作其分ヲ超レハ自心ニ背ク。世間ニ背ク。人倫ニ背ク。天道ニ背ク。法性ニ背クシヤ。此ヲ初ニ慎マネハ。後救フベカラザルニ至ルシヤ。コノ常ヲ守リ分ヲ超ヌコトハ。至テ易キ道ナレトモ。其徳ハ広大ナルコトシヤ。天地ノ道シヤ。万物ノ情シヤ。古今不易ノ大道シヤ。日月星辰ソノ常アルヲ見ヨ。若常度ヲ違ルハ不吉ノ徴シヤ。四時常アルヲ看ヨ。若時候不順ナルハ灾ノ兆シヤ。山海常アルヲ看ヨ。若山崩レ海涸ルハ不吉ノ兆シヤ。万物常アルヲ看ヨ。古ヨリ紅ノ雪アサキノ雪ハ不吉ト云コトシヤ。牝鶏ノ晨スル雄鶏ノヨヒ鳴スルモ不吉ト名ツクルシヤ。元朝ノ亡ルトキ。杜鵑カ上都ニ啼ト云。狐カ宮中ヨリ出タト云コトシヤ。万般ミナ思テ知ベキシヤ。

現代語訳

(不貪欲戒は)あらゆる世間において護持しなければならない法である。一念でも分を超えて貪欲に従えば、自分の心に背くのである。世間に背くのである。人倫に背くのである。天道に背くのである。法性に背くのである。一言半句でもその分を超えれば、自分の心に背く。世間に背く。人倫に背く。天道に背く。法性に背く。一つの行い、一つの振る舞いでもその分を超えれば、自分の心に背く。世間に背く。人倫に背く。天道に背く。法性に背くのである。これを初めに慎まなければ、後に救うことができないまでに至るのである。この常を守り分を超えないことは、至って易しい道であるけれども、その徳は広大なことである。天地の道である。万物の情である。古今不易の大道である。日月星辰にその常があるのを見よ。もし常の運行を違えるのは、不吉のしるしである。四季に常があるのを見よ。もし時候が不順なのは、災いの兆しである。山や海に常があるのを見よ。もし山が崩れ海が涸れるのは、不吉の兆しである。万物に常があるのを見よ。昔から、紅の雪や浅葱色の雪は不吉ということである。雌鶏が朝を告げ、雄鶏が宵に鳴くのも不吉と名づけるのである。元朝が滅びるとき、ほととぎすが上都で啼いたと言う。狐が宮中から出たということである。万般、みな思って知るべきである。

解説

分を超えないことの広さを説く段である。一つの念、一言、一つの行いでも分を超えれば、自分の心、世間、人倫、天道、法性の五つに同時に背くと尊者は言う。常を守ることは易しいが、その徳は天地の道、万物の情にかなう大道である。日月星辰や四季、山海が常を保ち、常が崩れるのを昔の人が凶兆と見たのも、この感覚から来ている。紅の雪や時を違えて鳴く鶏の話は当時の兆しの見方として読むべきだが、平凡な常を守ることの重みは、日々の仕事の基本動作にも通じる。

この章句が説くこと

天道法性人倫不貪欲

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