言志四録 / 言志耋録 第百四十二条 志操は利刃の如し
志操如利刃。可以貫物。不肯迎合窺人鼻息。古人云鐵劒利。則倡優拙。葢謂此也。
新字:志操如利刃。可以貫物。不肯迎合窺人鼻息。古人云鉄劒利。則倡優拙。葢謂此也。
書き下し
志操は利刃の如く、以て物を貫くべし。肯へて迎合して人の鼻息を窺はず。古人云ふ、「鉄剣利なれば、則ち倡優拙し」と。蓋し此を謂ふなり。
現代語訳
志と節操は鋭い刃物のようなもので、物を貫き通すことができる。進んで人に迎合し、人の顔色をうかがうようなことはしない。古人が「鉄の剣が鋭ければ、役者や芸人は拙くなる」と言ったのは、思うにこのことを言うのである。
解説
志操、すなわち志とそれを守り抜く節操を、物を貫く鋭い刃にたとえた一条です。刃が鋭ければ抵抗に負けずに突き通るように、志操の堅い人は人に迎合せず、「鼻息を窺ふ」、つまり相手の機嫌をうかがうこともしない。引かれた「鉄剣利なれば倡優拙し」は『史記』范雎蔡沢列伝に見える秦の昭王の言葉で、もとは兵器が鋭く、君主を楽しませる芸人が拙い国は侮れないという意味です。一斎はこれを、内に鋭い志があれば人に媚びる芸はおのずと拙くなると読み替えています。周囲に合わせることが求められる場面で、どこまでが協調でどこからが迎合かを見極める手がかりになるでしょう。
この章句が説くこと
志操節操迎合立志気骨
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