言志四録 / 言志耋録 第百三十一条 患は易心に生ず
騎。不踣於登山。而躓於下阪。舟不覆於逆浪。而漂於順風。凡患生於易心。不可不愼。
新字:騎。不踣於登山。而躓於下阪。舟不覆於逆浪。而漂於順風。凡患生於易心。不可不慎。
書き下し
騎は、山に登るに踣れずして、阪を下るに躓く。舟は逆浪に覆らずして、順風に漂ふ。凡そ患は易心に生ず。慎まざるべからず。
現代語訳
馬に乗る者は、山を登るときには倒れず、坂を下るときにつまずく。舟は逆巻く波では転覆せず、順風のときに押し流される。およそ災いは、事を易しいと侮る油断の心から生じる。慎まなければならない。
解説
馬は登り坂より下り坂で、舟は逆波より順風で事故を起こす、という身近な観察から、災いは「易心」、すなわち物事を易しいと見くびる心から生じると説く一条です。困難な場面では誰もが緊張して注意を払うため、かえって失敗は少なく、楽に進めると思った瞬間に足もとがおろそかになります。続く数条で一斎は順境と逆境の心の持ち方を論じており、この条はその入口にあたります。業績が好調なとき、計画が順調に進んでいるときほど、見落としや慢心が入り込みやすいものです。うまくいっている局面で何を点検するかを考える材料になるでしょう。
この章句が説くこと
油断慎み順境危機管理心術
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