言志四録 / 言志耋録 第八十七条 苦楽栄辱は人生の呼吸
寒暑榮枯。天地之呼吸也。苦樂榮辱。人生之呼吸也。即世界之所以爲活物。
新字:寒暑栄枯。天地之呼吸也。苦楽栄辱。人生之呼吸也。即世界之所以為活物。
書き下し
寒暑栄枯は、天地の呼吸なり。苦楽栄辱は、人生の呼吸なり。即ち世界の活物たる所以なり。
現代語訳
寒さ暑さや草木の栄え枯れは、天地の呼吸である。苦しみと楽しみ、栄誉と恥辱は、人生の呼吸である。これこそが、世界が生きたものであるゆえんである。
解説
寒暑や草木の栄枯を天地の呼吸に、苦楽や栄辱を人生の呼吸にたとえた一条です。呼吸は吸うことと吐くことの繰り返しで、どちらか一方だけでは生きられません。同じように、苦しみだけの人生も楽しみだけの人生もなく、その交替こそが生きていることの証だと一斎は言います。世界が生きた存在であるのは、この呼吸のような往来があるからです。この数条にわたって、一斎は天地の変化と人の運命とを重ねて考えてきました。その結びとして、苦しみや恥辱もまた人生の呼吸の一部と受け止める視点が示されています。つらい時期を、吐く息の時期として落ち着いて受け止める助けになる言葉です。
この章句が説くこと
苦楽栄辱循環活物人生観
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