言志四録 / 言志耋録 第八十二条 天運と人事は数に同異無し
大而世運之盛衰。小而人事之榮辱。古徃今來。皆旋轉而移。猶五星之行。有順有逆。以與太陽相會。天運人事。數無同異。不可不知也。
新字:大而世運之盛衰。小而人事之栄辱。古往今来。皆旋転而移。猶五星之行。有順有逆。以与太陽相会。天運人事。数無同異。不可不知也。
書き下し
大にしては世運の盛衰、小にしては人事の栄辱、古往今来、皆旋転して移る。猶ほ五星の行に、順有り逆有りて、以て太陽と相会するがごとし。天運と人事と、数に同異無し。知らざるべからざるなり。
現代語訳
大きくは世の中の運気の盛衰、小さくは個人の身の上の栄誉と恥辱も、昔から今に至るまで、すべてめぐりめぐって移り変わる。それはちょうど五つの惑星(木・火・土・金・水)の運行に、順行と逆行があって、やがて太陽と出会うようなものである。天の運行も人の事柄も、その巡り合わせの理に違いはない。このことは知っておかなければならない。
解説
前条の歴史観をさらに広げ、世の盛衰も一身の栄辱もめぐり移ると述べた条です。一斎はそれを、木星や火星など五つの惑星の動きにたとえます。地上から見ると惑星は、あるときは順行し、あるときは逆行するように見えますが、やがて太陽と会合する。人の運命も、上り調子のときもあれば後退するように見えるときもあるが、大きな周期の中で動いている、ということです。江戸後期には西洋天文学の知識も広まっており、一斎がそうした知見に関心を持っていたことがうかがえます。好調が永遠に続くことも、不調が永遠に続くこともない。その認識は、順境で驕らず、逆境で折れないための支えになります。
この章句が説くこと
盛衰栄辱循環天運人事
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