言志四録 / 言志耋録 第四十六条 一旦豁然は海天の日の出
一旦豁然四字。眞是海天出日景象。勿認做參禪頓悟境。
新字:一旦豁然四字。真是海天出日景象。勿認做参禅頓悟境。
書き下し
一旦豁然の四字は、真に是れ海天に日の出づる景象なり。認めて参禅頓悟の境と做すこと勿れ。
現代語訳
「一旦豁然(ある日からりと開ける)」の四字(朱子『大学章句』格物補伝の語)は、まさに海と空の間に太陽が昇る光景のようである。これを禅の修行で一気に悟る境地と取り違えてはならない。
解説
「一旦豁然」は、朱子が『大学章句』の格物補伝で、物事の理を一つひとつ窮めていくと、ある日からりと全体が貫通すると述べた言葉です。一斎はその境地を、海と空の間から朝日が昇る光景にたとえました。夜明けは突然訪れるように見えて、実は長い夜の間に少しずつ準備されています。だからこそ一斎は、これを禅でいう修行抜きの「頓悟」と混同するなと釘を刺します。積み重ねの末に開ける視界と、一足飛びの悟りとは違うということです。仕事でも、あるとき急に全体が見える瞬間がありますが、それは地道な経験の蓄積があってこそです。近道を求める気持ちに対する、静かな戒めとして読めます。
この章句が説くこと
格物豁然貫通積み重ね頓悟学問
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