言志四録 / 言志晩録 別存 第四十一条 言に服して心に服せず
公曰。區處一事。要使人有所感戴。有所倚賴。不然。人服於言。不服於心。
新字:公曰。区処一事。要使人有所感戴。有所倚頼。不然。人服於言。不服於心。
書き下し
公曰く、一事を区処するには、人をして感戴する所有り、倚頼する所有らしむるを要す。然らずんば、人は言に服して、心に服せず。
現代語訳
公(林述斎)は言った。一つの事を処置するときは、人々に感じ入ってありがたく思うところがあり、頼りにできるところがあるようにしなければならない。そうでなければ、人は言葉には従っても、心からは従わない。
解説
『言志晩録』に付された別存は、一斎の師であり主君筋でもあった林述斎(快烈公)の言葉を書き留めたものです。ここで述斎は、物事を処理するとき大切なのは、筋の通った指示を出すことだけではないと言います。人々が「ありがたい」と感じ、「この人なら任せられる」と頼れる手ごたえがなければ、表向きは言葉に従っても心は離れていきます。大学頭として長く昌平坂学問所と林家を率いた述斎の、人を動かす実感がこもった言葉でしょう。命令や規則で人を動かせる範囲には限りがあります。部下が納得して動いているのか、言われたから動いているだけなのかを見分ける手がかりになる一条です。
この章句が説くこと
心服信頼処事統率人心
関連する章句
-
史記 高祖本紀且つ吾の軍を霸上に還す所以は、諸侯の至るを待ちて約束を定めんのみ。」と。乃ち人をして秦の吏と県郷邑を行かしめ、之に告諭す。秦人大いに喜び、争ひて牛羊酒食を持ちて軍士に献饗す。沛公又譲りて受けず、曰く、「倉粟多し、乏しきに非ず、人に費さしむるを欲せず。」と。人又益々喜び、唯だ沛公の秦王と為らざらんことを恐る。
-
論語・子張篇孟氏、陽膚をして士師たらしむ。曾子に問う。曾子曰く、「上其の道を失いて、民散ずること久し。如し其の情を得ば、則ち哀矜して喜ぶこと勿かれ。」
-
李衛公問対・卷中蕭王、赤心を人の腹中に推す。
-
『呻吟語』内篇・存心・如何ぞ他を縱容し得んや人心は是れ個の猖狂自在の物、隕身敗家の賊なり。如何ぞ他を縱容し得んや。
-
『呻吟語』内篇・應務・一の拙法有り世人の相與するは、面上に非ざれば則ち口中なり。人の心は固より面と口とに掩ふ能はず。而して測る可からざる者は則ち面と口とに盡きざるなり。故に惟だ人心のみ最も畏る可く、人心最も知る可からず。此れ天下の陷阱にして、古今生死の衢なり。余に一の拙法有り。之を推すに至誠を以てし、之を施すに至厚を以てし、之を持するに至慎を以てし、是非を遠ざけ、利名を讓り、後下に處せば、則ち夷狄鳥獸も骨肉腹心とす可し。將に深き者をして且つ心を傾けしめ、險なる者をして且つ德に化せしめんとす。而して何ぞ陷阱の予に及ばんや。
-
『呻吟語』外篇・治道・人を我に體す先王の政を為すは、全く人心の上に在りて工夫を用ふ。其の人心を體するは、我が心の上に在りて工夫を用ふ。何者ぞ。同然の故なり。故に先王は人を我に體して、民心得られ、天下治まる。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る