言志四録 / 言志晩録 別存 第十九条 憫恤の心は他人に倍す
公憫恤之心。倍蓰他人。至老婆少女若瞽盲。無不感恩。但於强壯而遊惰者。則嚴加苛責。不少假。
新字:公憫恤之心。倍蓰他人。至老婆少女若瞽盲。無不感恩。但於強壮而遊惰者。則厳加苛責。不少仮。
書き下し
公の憫恤の心は、他人に倍蓰す。老婆少女、瞽盲の若きに至るまで、恩に感ぜざる無し。但だ強壮にして遊惰なる者に於ては、則ち厳しく苛責を加へ、少しも仮さず。
現代語訳
公(林述斎)の人をあわれみいたわる心は、他人の何倍もあった。老婆や少女、目の不自由な人などに至るまで、その恩に感じない者はなかった。ただ、体が丈夫で強いのに遊び怠けている者に対しては、厳しく責め立て、少しも容赦しなかった。
解説
述斎の情け深さと厳しさの両面を記した条です。老人や少女、目の不自由な人など、弱い立場の人へのいたわりは人の何倍もあり、誰もがその恩に感じたといいます。一方、体が丈夫なのに怠けている者には少しも容赦しませんでした。「倍蓰」は『孟子』に出る語で、二倍、五倍を言います。一見正反対の態度ですが、力の及ばない者は助け、力があるのに尽くさない者は責めるという点で、筋は一本に通っています。先に見た少年時代、年寄りの駕籠かきを気づかった話とも響き合います。組織を率いる人が、支えるべき相手と奮起を促すべき相手をどう見分けているかを考える材料になります。
この章句が説くこと
憫恤仁寛厳怠惰弱者への配慮
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