言志四録 / 言志晩録 別存 第十三条 兄弟の子は猶ほ子のごとし
公之長子諱光。次男已下。名皆從光字。女從糸字。余毎得男女子。公必賜名。亦男從光字。女從糸字。余初辭之。公曰。兄弟之子猶子也。勿辭。
新字:公之長子諱光。次男已下。名皆従光字。女従糸字。余毎得男女子。公必賜名。亦男従光字。女従糸字。余初辞之。公曰。兄弟之子猶子也。勿辞。
書き下し
公の長子の諱は光、次男已下は、名皆光字に従ふ。女は糸字に従ふ。余男女子を得る毎に、公必ず名を賜ふ。亦男は光字に従ひ、女は糸字に従ふ。余初め之を辞す。公曰く、「兄弟の子は猶ほ子のごとし。辞すること勿れ」と。
現代語訳
公(林述斎)の長男の名は光で、次男以下の名は皆「光」の字を用いた。娘には「糸」へんの字を用いた。私に男の子や女の子が生まれるたびに、公は必ず名を授けてくださった。やはり男子には「光」の字、女子には「糸」へんの字を用いた。私は初めこれを辞退したが、公は言った。「兄弟の子は自分の子のようなものだ。辞退するな」。
解説
述斎が一斎の子どもたちに、自分の子と同じ字を用いた名を授けたという記録です。述斎の男子は「光」の字、女子は「糸」へんの字を名に用いており、一斎の子にも同じ字で名をつけました。恐縮して辞退した一斎に、述斎は「兄弟の子はわが子も同然だ」と答えています。前条の「帽親の子は猶ほ兄弟のごとし」という言葉を、述斎は生涯にわたって実行していたわけです。主家の当主と家臣の子という身分の差を越えて、家族同然に遇されたことへの一斎の感謝がにじみます。言葉で約束することはたやすくても、それを長い年月にわたって行いで示し続けるのは難しいものです。信頼関係の築き方を考える手がかりになります。
この章句が説くこと
恩義命名信義師弟家族
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