言志四録 / 言志晩録 別存 第七条 進講の前日は心斎す
公毎有進講。前一日心齋在家。非有緊要急務。則客來不面。葢不如此。則臨講不足以竦主聽。余竊敬服。
新字:公毎有進講。前一日心斎在家。非有緊要急務。則客来不面。葢不如此。則臨講不足以竦主聴。余窃敬服。
書き下し
公進講有る毎に、前一日心斎して家に在り。緊要急務有るに非ざれば、則ち客来るも面せず。蓋し此くの如くならざれば、則ち講に臨みて以て主聴を竦ましむるに足らず。余竊かに敬服す。
現代語訳
公(林述斎)は将軍に進講するたびに、その前日は心を清め身を慎んで家にこもった。よほど重要で急な用事でなければ、客が来ても会わなかった。思うに、こうしなければ、講義の場に臨んで将軍に襟を正して聴かせることができないからである。私はひそかに敬服した。
解説
述斎が将軍への進講の前日、「心斎」して家にこもり、急用でなければ客にも会わなかったという記録です。心斎は『荘子』に由来する語で、心を空しく清めることを言います。聴き手を「竦ましむる」、つまり襟を正して耳を傾けさせるには、話す内容以前に、話す者自身の心の張りが要るというわけです。一斎が「竊かに敬服す」と書いたのは、学識の高さよりも、その準備の構えに打たれたからでしょう。大事な提案や説明の前日をどう過ごしているかは、意外に結果を左右します。準備とは資料を整えることだけでなく、自分の心を整えることでもあると気づかせてくれる一条です。
この章句が説くこと
準備心斎慎み進講集中
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