言志四録 / 言志晩録 第二百七十六条 老いて養ふを知らず
貴介人多畜婢妾。踰耆年得兒者。往往有之。非攝養之宜。老而不知養。比之不慈不孝。
新字:貴介人多畜婢妾。踰耆年得児者。往往有之。非摂養之宜。老而不知養。比之不慈不孝。
書き下し
貴介の人多く婢妾を畜ふ。耆年を踰えて児を得る者、往往にして之有り。摂養の宜しきに非ず。老いて養ふを知らざるは、之を不慈不孝に比す。
現代語訳
身分の高い人は多く侍女や妾を抱えている。六十を過ぎて子をもうける者も、しばしばある。これは身を養う道にかなったことではない。老いて身を養うことを知らないのは、不慈(子への慈しみを欠くこと)・不孝に比すべきものである。
解説
大名や高位の武家などの「貴介」が、多くの妾を抱え、六十を過ぎてなお子をもうけることへの苦言です。「耆年」は六十歳のこと。一斎はこれを摂養、つまり身を養う道に反するとし、老いて養生を知らないことは不慈不孝に等しいと断じます。幼い子を残して先立てば子に対して慈しみを欠き、親から受けた身を損なえば親に対して孝を欠く、という理屈でしょう。前の数条で養生を孝と結びつけてきた論の、具体的で率直な応用です。林家に仕え大名家とも交わった一斎が見聞きした実情への批判とも読めます。権力や財力があるからこそ節度を失いやすい、という点は今の組織の上に立つ人にも通じる指摘です。
この章句が説くこと
養生節度孝慈欲望
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