言志四録 / 言志晩録 第二百六十一条 惟だ義は忘るべからず
人抵老境。儘善忘。惟義不可忘。
書き下し
人老境に抵れば、儘く善く忘る。惟だ義は忘るべからず。
現代語訳
人は老境に至ると、何もかもよく忘れるようになる。ただ義だけは忘れてはならない。
解説
老いて物忘れが増えるのは誰にも避けられないことです。一斎はそれを咎めるのではなく、何を忘れても、ただ「義」、つまり人として踏むべき筋道だけは忘れてはならないと言います。細かな記憶が失われても、正しいことを選ぶ心の軸さえ保たれていれば、人としての本分は損なわれないという考えです。孟子が「生も亦我が欲する所、義も亦我が欲する所」と、命より義を重んじたことにも通じます。晩年の一斎が自らに言い聞かせた言葉でもあるでしょう。忙しさや年齢で多くを取りこぼしていくなかで、これだけは手放さないというものを一つ定めておくことの意味を考えさせる一条です。
この章句が説くこと
義老い忘却本分
関連する章句
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呂氏春秋・髙義①君子の自ら行うや、動けば必ず義に縁る。行うこと必ず義に誠なれば、俗、之を窮せりと謂うと雖も、通ずるなり。行うこと義に誠ならず、動くこと義に縁らざれば、俗、之を通ぜりと謂うと雖も、窮せるなり。然らば則ち君子の窮通は、俗に異なる者有るなり。故に功に當りて以て賞を受け、罪に當りて以て罰を受く。賞當たらざれば、之に與うと雖も必ず辭す。罰誠に當たれば、之を赦すと雖も外けず。之を國に度れば、必ず利長久ならん。長久の主に於ける、必ず宜しく內は心に反して慚ぢずして然る後動くべし。
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司馬法・仁本義を争いて利を争わず、是を以てその義を明らかにするなり。
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呂氏春秋・論威①義なる者は、萬事の紀なり。君臣上下親疏の由りて起こる所なり。治亂安危過勝の在る所なり。過勝の道は、他に求むること勿し、必ず己に反る。
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論語・陽貨篇子曰く、唯だ上知と下愚とは移らざるなり。
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呂氏春秋・別類④義は小しく之を為せば、則ち小しく福有り、大いに之を為せば、則ち大いに福有り。禍に於いては則ち然らず。小しく之れ有るは、其の亡きに若かざるなり。招を射る者は其の小に中つるを欲するなり。獸を射る者は其の大に中つるを欲するなり。物は固より必ならず。安んぞ推す可けんや。
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論語・為政篇子曰く、其の鬼に非ずして之を祭るは、諂いなり。義を見て為さざるは、勇無きなり。
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