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言志四録 / 言志晩録 第二百六十二条 壮者を蔑視する勿れ

吾壯齡時。事事踰矩。七十以後。事事不及矩。凡有事時。須與少壯者商議。以輔吾不逮。勿挾老大以蔑視壯者。可。

新字:吾壮齢時。事事踰矩。七十以後。事事不及矩。凡有事時。須与少壮者商議。以輔吾不逮。勿挟老大以蔑視壮者。可。

書き下し

吾壮齢の時、事事矩を踰ゆ。七十以後、事事矩に及ばず。凡そ事有る時は、須らく少壮の者と商議して、以て吾が逮ばざるを輔くべし。老大を挟みて以て壮者を蔑視すること勿くんば、可なり。

現代語訳

私は壮年のころ、何事も規矩(のり)を踏み越えてしまった。七十を過ぎてからは、何事も規矩に届かなくなった。およそ事にあたるときは、若く壮んな者と相談して、自分の及ばないところを補ってもらうべきである。年長であることを笠に着て若い者を見くびることさえしなければ、それでよい。

解説

孔子は「七十にして心の欲する所に従へども矩を踰えず」と言いましたが、一斎は自分を省みて、壮年には何事もやり過ぎて矩を踰え、七十を過ぎると今度は矩に届かなくなったと率直に述べます。気力や判断が衰えた分は、若い人と相談して補えばよい。ただし年長であることを笠に着て若者を軽んじてはならない、というのが結論です。昌平坂学問所で多くの門人を育てた一斎の、老いてなお学ぶ側に立とうとする姿勢がにじみます。経験のある人ほど、自分の衰えや盲点を認めて若い世代の知恵を借りられるかが問われます。立場の差を越えて相談できる関係をどうつくるかを考える手がかりになります。

この章句が説くこと

謙虚相談老い世代矩

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