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言志四録 / 言志晩録 第二百三十二条 父の気は種子、母の胎は田地

人之生。父氣猶種子。母胎猶田地。余年來閱人。夫性厚重而婦順良。或慧敏。則生子多有材幹。夫雖有才幹。而婦暗弱。或姦黠。則生子多不才。或不良。十中八九如是。然未謂必然。

新字:人之生。父気猶種子。母胎猶田地。余年来閲人。夫性厚重而婦順良。或慧敏。則生子多有材幹。夫雖有才幹。而婦暗弱。或姦黠。則生子多不才。或不良。十中八九如是。然未謂必然。

書き下し

人の生まるるや、父の気は猶ほ種子のごとく、母の胎は猶ほ田地のごとし。余年来人を閲するに、夫の性厚重にして婦順良、或いは慧敏なれば、則ち生む子多く材幹有り。夫才幹有りと雖も、婦暗弱、或いは姦黠なれば、則ち生む子多く不才、或いは不良なり。十中八九是くの如し。然れども未だ必ず然りとは謂はず。

現代語訳

人が生まれるとき、父の気は種のようなものであり、母の胎は田畑のようなものである。私が長年にわたって人を見てきたところでは、夫の性質が重厚で、妻が素直で善良、あるいは賢く機敏であれば、生まれる子には才幹のある者が多い。夫に才幹があっても、妻が暗愚で弱く、あるいはずる賢ければ、生まれる子には才のない者、あるいは素行のよくない者が多い。十のうち八、九はこのとおりである。しかし、必ずそうなるとまでは言わない。

解説

種と田畑の比喩で、子の資質に父母がどう関わるかを論じた一条です。一斎は長年の観察から、母の人柄が子の才に大きく影響すると述べています。父の気を種、母胎を土壌とする見方は当時の通念であり、現代の遺伝学や、子の育ちを親の資質だけで説明する見方とは相容れません。ただ、この条は、子が日々接する母の心の持ち方が育ちを左右するという、家庭の環境の重みを言ったものとも読めます。そして一斎自身、十中八九と言いながら最後に「必ずしもそうとは言わない」と断定を避けています。観察から傾向を語りつつ、例外を認めて決めつけない。この慎重さこそ、人を見る者が学ぶべき点でしょう。人の資質を出自で判断しないための戒めとしても読めます。

この章句が説くこと

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