言志四録 / 言志晩録 第二百十五条 得意の時は言語を饒くす
人得意時輙饒言語。逆意時即動聲色。皆見養之不足。
新字:人得意時輙饒言語。逆意時即動声色。皆見養之不足。
書き下し
人意を得る時は輙ち言語を饒くし、意に逆ふ時は即ち声色を動かす。皆養の足らざるを見る。
現代語訳
人は思いどおりになったときには、すぐに口数が多くなる。意に反したときには、すぐに声や顔色を変える。どちらも修養が足りていないことを示している。
解説
うまくいけば饒舌になり、うまくいかなければ声を荒らげ顔色を変える。誰もが覚えのある心の揺れを、一斎は「養の足らざる」しるしだと指摘します。ここでいう養とは、孟子のいう浩然の気を養うこと、宋学でいう存養、すなわち心を保ち育てる日々の工夫です。心が十分に養われていれば、順境でも逆境でも外に表れる言動はそれほど変わりません。『言志録』の「得意の時候は最も当に退歩の工夫を著くべし」とも通じる考え方です。成果が出たときにしゃべりすぎていないか、報告が期待外れだったときに表情に出ていないか。人の上に立つ人ほど、その振れ幅を周囲から見られています。自分の感情の出方を観察することが、修養の度合いを知る手がかりになります。
この章句が説くこと
存養感情平常心言葉修養
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