言志四録 / 言志晩録 第二百四条 甘は苦中より生ず
藥物。甘自苦中生者多有效。人亦閱歷艱苦。則思慮自濃。恰好濟事。與此相似。
新字:薬物。甘自苦中生者多有効。人亦閲歴艱苦。則思慮自濃。恰好済事。与此相似。
書き下し
薬物は、甘の苦中より生ずる者、多く効有り。人も亦艱苦を閲歴すれば、則ち思慮自ら濃やかにして、恰好く事を済す。此れと相似たり。
現代語訳
薬は、苦みの中から甘みが出てくるようなものに、よく効くものが多い。人もまた苦難を経験すると、考えがおのずと細やかになり、ちょうどよく事を成し遂げられる。これは薬の場合とよく似ている。
解説
薬の味にたとえて、苦労の効用を説いた条です。よく効く薬には、口に含むとまず苦く、やがて奥から甘みが出てくるものが多い。人も同じで、苦しみを経た人は考えが濃やかになり、物事をほどよく処理できるようになる、と一斎は言います。苦難そのものに価値があるのではなく、苦難をくぐることで思慮が深まり、その結果として事にうまく当たれる、という筋道が大切です。次の条では、艱難を共にした者の結びつきの強さへと話が続きます。困難な案件や挫折の経験は、渦中では苦いだけですが、後になって判断の細やかさとして生きてくる。若手に苦労を強いる理屈ではなく、自分の苦い経験を意味づけ直す材料として読める言葉です。
この章句が説くこと
艱難苦労思慮経験成長
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