言志四録 / 言志晩録 第百九十七条 脇掻の癢みは忍び難し
背撻之痛易耐。脇搔之癢難忍。
書き下し
背を撻たるるの痛みは耐へ易く、脇を掻かるるの癢みは忍び難し。
現代語訳
背中を鞭で打たれる痛みは耐えやすいが、脇の下をくすぐられるむずがゆさは我慢しにくい。
解説
痛みとくすぐったさという身体の感覚を対比させた、短く鋭い条です。背を鞭打たれる痛みは激しくても、歯を食いしばって耐えることができます。ところが脇をくすぐられるむずがゆさは、軽いものなのに我慢がききません。これを人生に移せば、あからさまな非難や苦難には身構えて耐えられても、甘い言葉やへつらい、ちょっとした誘惑には、つい心が崩れてしまうということでしょう。先の条で、大きな欲より小さな欲の方が克ちにくいと述べたのと同じ構図です。厳しい批判より、周囲の称賛や心地よい忖度の方が判断を狂わせることがあります。地位が上がるほど、くすぐりの多さに注意を向けたくなる一条です。
この章句が説くこと
誘惑へつらい忍耐克己心の隙
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