言志四録 / 言志晩録 第百八十条 小欲は克ち難し
欲有大小。大欲之發。我自知。克己或易。小欲則不自覺其爲欲。克己卻難。
新字:欲有大小。大欲之発。我自知。克己或易。小欲則不自覚其為欲。克己却難。
書き下し
欲に大小有り。大欲の発するは、我自ら知る。己に克つこと或いは易し。小欲は則ち自ら其の欲たるを覚えず。己に克つこと却つて難し。
現代語訳
欲には大小がある。大きな欲が起こったときは、自分でそれと分かるので、打ち克つのはかえって易しいこともある。小さな欲は、自分でそれが欲であると気づかない。だから打ち克つのはかえって難しい。
解説
前々条で「先づ大欲を去るべし」と述べた一斎が、今度は小さな欲の手ごわさを指摘した条です。大きな欲は目立つので、起こればすぐに自覚でき、意志を働かせる余地があります。ところが小さな欲は、ちょっとした見栄や怠け心、好き嫌いのように日常に紛れ込み、欲とすら意識されません。気づかないものには克ちようがないので、かえって難しいのです。克己の出発点は、まず自分の心の動きに気づくことにあるという指摘でもあります。大きな不正は制度で防げても、小さな手抜きや私情は本人にも見えにくいものです。自分の判断にまぎれ込んだ小さな欲を点検する習慣が、仕事の質を左右するのかもしれません。
この章句が説くこと
克己人欲自覚心術小欲
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