言志四録 / 言志晩録 第百九十四条 従前の履歴を回顧す
人當回顧從前履歷。以占安穩地。若趧然不知駐步處。必墜淵壑。
新字:人当回顧従前履歴。以占安穏地。若趧然不知駐歩処。必墜淵壑。
書き下し
人は当に従前の履歴を回顧して、以て安穏の地を占むべし。若し趧然として歩を駐むる処を知らずんば、必ず淵壑に墜ちん。
現代語訳
人は、これまでの自分の歩みを振り返って、安らかで穏やかな立場を定めるべきである。もしやみくもに突き進んで足を止めるところを知らなければ、必ず深い淵や谷に落ちるであろう。
解説
前条の「過去は将来の路頭」を受けて、履歴の回顧を具体的に勧めた条です。自分がこれまでどんな道を歩み、何を得て何に失敗してきたかを振り返ると、自分に合った落ち着き場所が見えてきます。それを「安穏の地を占む」と言います。反対に、勢いに任せて駆け続け、どこで止まるべきかを知らない者は、必ず深い淵や谷に転落する。止まるべきところを知ることは『大学』の「止まるを知りて后に定まる有り」にも通じます。四十二歳から書き始め、八十歳を過ぎても書き継いだ一斎の歩みそのものが、回顧と前進の繰り返しでした。拡大を続ける事業や、休まず走り続ける働き方において、立ち止まる地点を考える手がかりになります。
この章句が説くこと
回顧止まるを知る安穏履歴慎重
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