言志四録 / 言志晩録 第百八十七条 平生便用の物を撫愛す
書室中。自机硯書冊以外。凡平生所便用物件。雖無知覺。而皆有感應。宜撫愛之。莫或毀損。是亦愼德之一。
新字:書室中。自机硯書冊以外。凡平生所便用物件。雖無知覚。而皆有感応。宜撫愛之。莫或毀損。是亦慎徳之一。
書き下し
書室の中、机硯書冊より以外、凡そ平生便用する所の物件は、知覚無しと雖も、皆感応有り。宜しく之を撫愛し、或いは毀損すること莫かるべし。是れも亦慎徳の一なり。
現代語訳
書斎の中では、机や硯、書物をはじめ、およそふだん使い慣れている品物は、知覚こそないけれども、みな感じ応じ合うものがある。これらを大切に慈しみ、壊したり傷めたりすることのないようにすべきである。これもまた徳を慎むことの一つである。
解説
前条の「感応」を、書斎の道具にまで広げた条です。机や硯、書物には知覚はありませんが、毎日手に触れ使い込むうちに、使い手と道具の間には通い合うものが生まれます。一斎はそれを大切に扱い、傷めないことも「慎徳」、つまり徳を慎む修養の一つだと言います。道具を粗末に扱う心は、人や事をも粗末に扱う心とつながっているという見方です。四十年以上書き続けた学者の書斎での実感がこもっています。職場の備品や日々使う道具をどう扱っているかには、その人や組織の仕事への向き合い方が表れます。身の回りの物を丁寧に扱うことが、仕事全体の丁寧さを支えるという視点を与えてくれる一条です。
この章句が説くこと
感応慎徳物を大切にする丁寧さ道具
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