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言志四録 / 言志耋録 第二百十八条 外面を視て妄りに毀誉せず

人往往以文房諸翫寄贈。余固無翫物癖。常用机硯。皆係六十年外舊物。但人之寄贈。出於其厚意。則不欲曠之。故毎姑置之坐右。然不知者視而謗之。以爲翫物喪志。余曾不以此介諸意。因復自警謂。人做事各有意趣。徒視外面妄毀譽之。不可。秖足以視己之不明。無益也。

新字:人往往以文房諸翫寄贈。余固無翫物癖。常用机硯。皆係六十年外旧物。但人之寄贈。出於其厚意。則不欲曠之。故毎姑置之坐右。然不知者視而謗之。以為翫物喪志。余曽不以此介諸意。因復自警謂。人做事各有意趣。徒視外面妄毀誉之。不可。秖足以視己之不明。無益也。

書き下し

人往往文房の諸翫を以て寄贈す。余固より翫物の癖無し。常用の机硯は、皆六十年外の旧物に係る。但だ人の寄贈は、其の厚意に出づれば、則ち之を曠しくするを欲せず。故に毎に姑く之を坐右に置く。然るに知らざる者は視て之を謗り、以て翫物喪志と為す。余曾て此を以て諸を意に介せず。因りて復た自ら警めて謂ふ、「人の事を做すは各意趣有り。徒らに外面を視て妄りに之を毀誉するは、不可なり。秖だ以て己の不明を視すに足るのみにして、益無きなり」と。

現代語訳

人はしばしば文房具の愛玩品を贈ってくれる。私はもともと物を愛玩する癖はなく、ふだん使っている机や硯は、みな六十年以上も前からの古い品である。ただ、人が贈ってくれるのは厚意から出たものなので、それを無駄にしたくはない。そこでいつもしばらく座右に置いておく。ところが事情を知らない者はそれを見て謗り、「物をもてあそんで志を失っている(玩物喪志)」と言う。私はこれまでそのことを気にかけたことはない。そこでまた自らを戒めてこう言う、「人が何かをするのには、それぞれ思うところがある。ただ外見だけを見て、みだりに褒めたり謗ったりするのはよくない。それは自分の見識のなさを示すだけで、何の益もない」と。

解説

贈られた文房具を座右に置いていたら「玩物喪志」と陰口をたたかれた、という一斎自身の体験から始まる一条です。玩物喪志は書経の言葉で、物をもてあそんで志を失うことを言います。実際の一斎は六十年来の古い机と硯を使い続けており、贈り物を飾るのは贈り主の厚意を無にしないためでした。一斎は謗りを気にしませんでしたが、そこで終わらず、自分もまた他人の外面だけを見て毀誉していないかと矛先を自分に向けています。人の行いにはそれぞれ事情がある、外から見えるものだけで裁くのは自分の不明をさらすだけだ、という結論です。部下や同僚の行動を見た目で判断する前に、背後の意図を確かめているかを考えさせます。

この章句が説くこと

毀誉人を見る目玩物喪志厚意自戒

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