言志四録 / 言志晩録 第百七十一条 慮らずして知るは本体の発
不慮而知。本體之發也。慮而後得。工夫之成也。知者。即得者。非有二套。
新字:不慮而知。本体之発也。慮而後得。工夫之成也。知者。即得者。非有二套。
書き下し
慮らずして知るは、本体の発なり。慮りて後に得るは、工夫の成るなり。知る者は即ち得る者にして、二套有るに非ず。
現代語訳
考えを巡らさずに自然と分かるのは、心の本体(良知)がはたらき出たものである。考えを巡らしたうえで会得するのは、修養の工夫が実ったものである。しかし、自然に知ることと考えて会得することは同じ一つのものであって、二通りの別物があるわけではない。
解説
「慮らずして知る」は『孟子』尽心上の「人の慮らずして知る所の者は、其の良知なり」を、「慮りて後に得る」は『大学』の「慮りて而る後に能く得」を踏まえています。前者は生まれつき備わる本体の発露、後者は努力の積み重ねによる成果で、しばしば別物のように語られます。一斎はこれを二つに分けず、努力して得たものも結局は本来の良知が現れたにすぎないと見ます。朱子学の工夫と陽明学の本体をともに重んじた一斎らしい統合の視点です。直感と熟慮のどちらを信じるべきかと迷う場面は多いものですが、熟慮はもともと持っていた判断力を磨き出す作業だと考えると、二つを対立させずに扱えるかもしれません。
この章句が説くこと
良知本体工夫直感熟慮
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