言志四録 / 言志晩録 第百六十四条 事職外に渉る
人做事。各有本職。若事涉職外。假令有功。亦多取釁。譬如夏日之冷。冬日之煖。似宐非宐。
新字:人做事。各有本職。若事渉職外。仮令有功。亦多取釁。譬如夏日之冷。冬日之煖。似宐非宐。
書き下し
人事を做すに、各々本職有り。若し事職外に渉れば、仮令功有るも、亦多く釁を取る。譬へば夏日の冷、冬日の煖の如し。宜しきに似て宜しきに非ず。
現代語訳
人が仕事をするには、それぞれ本来の職分がある。もし仕事が職分の外にまで及ぶと、たとえ手柄があっても、やはり多くの場合、争いや不和の種をつくる。たとえば夏の日の冷たさ、冬の日の暖かさのようなものである。ありがたいようで、実は時宜にかなっていない。
解説
職分を越えた働きについての一条です。本来の持ち場の外に手を出せば、たとえ成果を上げても、かえって摩擦や恨みを買うことが多いと一斎は言います。その比喩が巧みで、夏の涼しさや冬の暖かさは一見ありがたいけれど、季節の本来の姿からすれば宜しきにあらず、というのです。『論語』の「其の位に在らざれば、其の政を謀らず」に通じる考えです。他の部署の仕事に善意で口を出して成果を上げても、担当者の面目を潰し、組織の秩序を乱すことがあります。越境が必要な場面ももちろんありますが、自分の働きがどこまで職分の内にあるのか、外に出るなら誰とどう話を通すのかを意識させる一条です。
この章句が説くこと
職分越権組織の秩序分をわきまえる時宜
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