言志四録 / 言志録 第五十一条 大臣は大綱を統ぶるのみ
大臣之職。統大綱而已。日間瑣事。遵依舊套可也。但發人難發之口。處人難處之事。年間率不過數次。勿須紛更勞擾。
新字:大臣之職。統大綱而已。日間瑣事。遵依旧套可也。但発人難発之口。処人難処之事。年間率不過数次。勿須紛更労擾。
書き下し
大臣の職は、大綱を統ぶるのみ。日間の瑣事は、旧套に遵依して可なり。但だ人の発し難きの口を発し、人の処し難きの事を処するは、年間率ね数次に過ぎず。須らく紛更して労擾すべからず。
現代語訳
大臣の職務は、大綱をまとめ統べることだけである。日々の細かな事柄は、これまでのしきたりに従っていればよい。ただ、人が言い出しにくいことを言い出し、人が処理しにくい事を処理する場面は、一年のうちにおおむね数回にすぎない。むやみにあれこれ改めて、人々を煩わせるようなことをしてはならない。
解説
重い地位にある者の仕事の配分を示した一条です。大臣は大きな方針をまとめることに専念し、日常の細事は前例どおりに回せばよい。本当に大臣が前に出るべきなのは、誰も言い出せないことを言い、誰も手をつけられない難事を引き受ける場面で、それは一年に数度しかない、と一斎は見ています。そのうえで戒めるのが「紛更労擾」、つまり新任者が手柄を急いで制度をいじり回し、下の者を振り回すことです。一斎自身、岩村藩の家老の家に生まれ、藩政の実際を身近に見て育ちました。忙しく動き回ることが仕事だと思いがちな管理職にとって、自分が出るべき数少ない場面を見きわめることの意味を考えさせる言葉です。
この章句が説くこと
大臣の職大綱前例決断権限委譲
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