言志四録 / 言志晩録 第百三十二条 官事を視ること家事の如し
仕爲吏者。宜視官事如家事。守公法如著龜。待僚友如兄弟。則爲能盡職分。唯大臣胸次。磊磊落落。當如長松老檜。不爲風雨振撼。則其治務必不在人後。
新字:仕為吏者。宜視官事如家事。守公法如著亀。待僚友如兄弟。則為能尽職分。唯大臣胸次。磊磊落落。当如長松老檜。不為風雨振撼。則其治務必不在人後。
書き下し
仕へて吏と為る者は、宜しく官事を視ること家事の如く、公法を守ること著亀の如く、僚友を待つこと兄弟の如くすべし。則ち能く職分を尽くすと為す。唯だ大臣の胸次は、磊磊落落として、当に長松老檜の如く、風雨の為に振撼せられざるべし。則ち其の治務必ず人後に在らず。
現代語訳
仕官して役人となった者は、公務を自分の家の仕事のように大切にし、公の法を蓍亀(占いに用いる筮竹と亀甲、すなわち神聖な規範)のように重んじて守り、同僚を兄弟のように遇するべきである。そうしてこそ職分を尽くしたといえる。ただ大臣の胸のうちは、さっぱりとして大らかで、年を経た松や檜のように、風雨によって揺り動かされることがあってはならない。そうすればその政務は必ず人に後れを取ることはない。
解説
役人の心得を三つの「如し」でまとめ、そのうえで大臣には別の資質を求めた一条です。公務をわが家のことのように思い、法を占いの神具のように畏れ敬い、同僚を兄弟として扱う。これが職分を尽くすということです。一方、大臣の胸中は磊落で、長い年月を経た松や檜のように風雨に揺るがないことが求められます。実務者には誠実さと規律を、上に立つ者には何事にも動じない度量を、と役割に応じて求めるものを変えている点が一斎らしいところです。担当者として求められることと、責任者として求められることは同じではありません。立場が変わったとき、自分に何が求められているのかを考える手がかりになります。
この章句が説くこと
職分公私同僚大臣の器泰然
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