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言志四録 / 言志晩録 第百三十八条 但だ内治の何如を問ふ

沿海侯國皆爲鎭兵。外寇不易覬覦。但問內治何如而已。內治有何別法。謹守祖宗之法。勿循名以喪實。敬躰祖宗之心。勿偷安而忘危。然後天變不足畏。人言不足懲。況於區區鱗介之族。尙足虞乎。

新字:沿海侯国皆為鎮兵。外寇不易覬覦。但問内治何如而已。内治有何別法。謹守祖宗之法。勿循名以喪実。敬体祖宗之心。勿偸安而忘危。然後天変不足畏。人言不足懲。況於区区鱗介之族。尚足虞乎。

書き下し

沿海の侯国皆鎮兵を為す。外寇覬覦し易からず。但だ内治の何如を問ふのみ。内治に何の別法か有らん。謹んで祖宗の法を守り、名に循ひて以て実を喪ふこと勿れ。敬んで祖宗の心を躰し、安きを偸みて危きを忘るること勿れ。然る後に天変も畏るるに足らず、人言も懲りるに足らず。況んや区区たる鱗介の族に於てをや、尚ほ虞ふるに足らんや。

現代語訳

海沿いの諸藩はみな守備の兵を置いている。外敵がたやすくわが国をうかがうことはできない。問題はただ国内の治まり具合がどうであるかだけである。内政に何か特別な方法があるわけではない。謹んで祖先の定めた法を守り、名目にばかり従って実質を失うことのないようにせよ。敬って祖先の心を体得し、目先の安楽をむさぼって危難を忘れることのないようにせよ。そうしてこそ、天変地異も恐れるに足らず、人の非難も気に病むに足りない。ましてや取るに足らない海の彼方の異国の者ども(鱗介の族)など、どうして心配するに足りようか。

解説

異国船の来航が相次ぎ、海防が論じられた時代の一条です。一斎は沿岸の守りは整っているとしたうえで、真に問うべきは内治だと言います。その方法は特別なものではなく、祖宗の法を守りながら名目に流れて実質を失わないこと、祖宗の心を体して安逸に流れず危うさを忘れないことに尽きます。内が固まっていれば、天変も人の非難も、まして外国の脅威も恐れるに足りないというのです。「鱗介の族」と外国を見下す表現には時代の限界がありますが、外患より内憂を重く見る視点は儒学の伝統に根ざしています。外部環境の脅威に目を奪われがちなとき、まず自分たちの足元が固まっているかを問い直す視点として読めます。

この章句が説くこと

内治海防名と実安逸の戒め為政

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