言志四録 / 言志晩録 第百十六条 釁端を啓く勿れ
膺海防之任者。以得民和爲先。器械次之。又須校彼此長短。以爲趨避。尤要勿啓釁端以貽後患。
新字:膺海防之任者。以得民和為先。器械次之。又須校彼此長短。以為趨避。尤要勿啓釁端以貽後患。
書き下し
海防の任に膺る者は、民和を得るを以て先と為し、器械は之に次ぐ。又須らく彼此の長短を校へて、以て趨避を為すべし。尤も要す、釁端を啓きて以て後患を貽すこと勿きを。
現代語訳
海の防備の任に当たる者は、民の和を得ることを第一とし、兵器はその次とする。また相手と自分の長所と短所を比べて、どこに向かいどこを避けるかを決めなければならない。とりわけ肝要なのは、自ら争いの糸口を開いて後の災いを残さないことである。
解説
海防の責任者の心得を三つにまとめた条です。第一に民の和、兵器はその次。これは『孟子』の「天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず」に通じ、前の数条と一貫しています。第二に彼我の長短を比べて、どこで勝負しどこを避けるかを見極めること。そして最も大切なのは、こちらから争いの端緒を開いて、後々まで禍根を残さないことだと言います。強硬論に走って不用意に戦端を開くことへの戒めで、異国船打払令が出され、対外関係が緊張していた時代の、老儒者の冷静な判断がうかがえます。交渉や競争の場で、目先の勢いで対立を始めていないか。後に何を残すかまで見通す視点を与える一条です。
この章句が説くこと
海防人の和彼我の長短紛争回避後患
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