言志四録 / 言志晩録 第百三十一条 利を興すは害を除くに如かず
賑財。不如免租。興利。不如除害。
書き下し
財を賑はすは、租を免ずるに如かず。利を興すは、害を除くに如かず。
現代語訳
財物を施して民を救うことは、租税を免除することには及ばない。利益を新たに起こすことは、害を取り除くことには及ばない。
解説
わずか十数字の中に、政治の優先順位を示した一条です。困っている民に金品を施すより、そもそも租税を免じて負担を軽くするほうがよい。新しい利益を興すより、今ある害を取り除くほうがよい。元の耶律楚材の「一利を興すは一害を除くに如かず」という言葉がよく知られており、一斎もその系譜に立っています。施しや新事業は目立ち、行う側の功績にもなりますが、負担の軽減や害の除去は地味で評価されにくいものです。それでも受け手にとっての効き目は後者のほうが大きい。新しい施策を足す前に、現場を妨げているものを取り除けないかを先に考える、という順序の感覚を示してくれます。
この章句が説くこと
為政除害負担軽減優先順位民政
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論語・顔淵篇子貢、政を問う。子曰く、「食を足し、兵を足し、民之を信ず。」子貢曰く、「必ず已むを得ずして去らば、斯の三者に於いて何をか先にせん。」曰く、「兵を去らん。」子貢曰く、「必ず已むを得ずして去らば、斯の二者に於いて何をか先にせん。」曰く、「食を去らん。古より皆死有り、民信無くんば立たず。」
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『韓非子』功名第二十八人臣の憂は一を得ざるに在り、故に曰く、「右手圓を書き、左手方を書けば、兩つながら成る能わず。」
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史記 伍子胥列伝其の後五年、呉王、斉の景公死して大臣寵を争ひ、新君弱しと聞き、乃ち師を興して北のかた斉を伐つ。伍子胥諫めて曰く、「句踐食に味を重ねず、死を弔ひ疾を問ふは、且に用ゐる所有らんと欲すればなり。此の人死せずんば、必ず呉の患ひと為らん。今呉の越有るは、猶ほ人の腹心の疾有るがごときなり。而るに王越を先にせずして乃ち斉を務むるは、亦た謬らずや」と。呉王聴かず、斉を伐ち、大いに斉の師を艾陵に敗り、遂に鄒・魯の君を威して以て帰る。益々子胥の謀を疏んず。
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孟子・告子章句上孟子曰く、「今、無名の指、屈して信びざる有り。疾痛して事に害あるに非ざるなり。如し能く之を信ばす者有れば、則ち秦楚の路をも遠しとせず。指の人に若かざるが為なり。指の人に若かざるは、則ち之を惡むことを知る。心の人に若かざるは、則ち惡むことを知らず。此を之れ類を知らずと謂うなり。」
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孟子・告子章句上孟子曰く、「人の身に於けるや、愛する所を兼ぬ。愛する所を兼ぬれば、則ち養う所を兼ぬ。無尺寸の膚も愛せざること無ければ、則ち尺寸の膚も養わざること無きなり。其の善不善を考うる所以の者は、豈に他有らんや。己に於て之を取るのみ。體に貴賤有り、小大有り。小を以て大を害すること無く、賤を以て貴を害すること無かれ。其の小を養う者は小人為り、其の大を養う者は大人為り。今場師有り。其の梧檟(ゴ・カ)を舎てて、其の樲棘(ジ・キョク)を養わば、則ち賤場師と為さん。其の一指を養いて、而も其の肩背を失いて知らざれば、則ち狼疾人と為さん。飲食の人は、則ち人之を賤む。其の小を養いて以て大を失うが為なり。飲食の人も失うこと有る無ければ、則ち口腹豈に適だ尺寸の膚の為のみならんや。」
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孟子・盡心章句上孟子曰く、「知者は知らざること無きなり。當に務むべきを之れ急と為す。仁者は愛せざること無きなり。賢を親しむを急にするを之れ務と為す。堯舜の知にして物に遍からざるは、先務を急にすればなり。堯舜の仁にして人を愛するに遍らざるは、賢を親しむを急にすればなり。三年の喪を能くせずして、緦(シ)・小功を之れ察し、放飯・流歠(セツ)して、齒決すること無きを問う、是を之れ務めを知らずと謂う。」
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