言志四録 / 言志晩録 第百十二条 事物必ず対あり
天地間事物必有對。相待而固。不問嘉耦怨耦。相爲資益。此理須商思。
新字:天地間事物必有対。相待而固。不問嘉耦怨耦。相為資益。此理須商思。
書き下し
天地間の事物は必ず対有り。相待ちて固し。嘉耦怨耦を問はず、相資益を為す。此の理須らく商思すべし。
現代語訳
天地の間の事物には必ず対になるものがある。互いに依存し合うことで堅固になる。よい相手(嘉耦)であれ仇敵(怨耦)であれ、互いに助けとなり益となる。この道理はよくよく考えてみなければならない。
解説
天地の事物には必ず対があり、互いに待ち合うことで成り立つという条です。陰陽、上下、表裏のように、一方だけでは存在しえないという易の世界観に基づいています。注目したいのは「嘉耦怨耦を問はず」の一句です。嘉耦はよい相手、怨耦は仇敵で、『春秋左氏伝』に由来する語です。親しい相手だけでなく、敵や競争相手もまた自分を固くし、益をもたらす存在だと一斎は言います。兵事を論じる条の間に置かれているのは、敵の存在も国を引き締める働きがあるという意味を含むのでしょう。のちの条でも敵国外患を薬石にたとえています。競合や反対者を、自分を鍛える存在としてどう位置づけるかを考えさせます。
この章句が説くこと
対待陰陽好敵手相互依存易経
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