言志四録 / 言志晩録 第九十五条 形は方を以て止まる
形以方止。勢以圓動。城陣行營。其理一也。
新字:形以方止。勢以円動。城陣行営。其理一也。
書き下し
形は方を以て止まり、勢は円を以て動く。城陣行営、其の理一なり。
現代語訳
形は四角であることによって安定してとどまり、勢いは丸いことによって動く。城も陣も、行軍も陣営も、その道理は一つである。
解説
『孫子』勢篇に、木や石は四角ければ止まり、丸ければ転がるという比喩があり、一斎はこれを踏まえています。守りの「形」は方正であることで動かず、攻めの「勢」は円滑であることでよく動く。籠城の城、野戦の陣、行軍、宿営と場面は違っても、止まるべきところは方に、動くべきところは円にするという理は一つだと言います。方と円は儒学でいう義と仁、あるいは原則と臨機応変にも重なります。一斎は兵法の語の中に、修養にも通じる普遍の道理を見ようとしています。組織においても、揺るがせにしてはならない骨組みと、状況に応じて柔らかく動く部分をどう見分けるかは、いつも問われるところです。
この章句が説くこと
形と勢方円兵法孫子原則と応変
関連する章句
-
言志四録・言志後録 第百九十五条 攻めざるを以て攻む「攻むる者は余り有り、守る者は足らず」と、兵法或は其れ然らん。余は則ち謂ふ、守る者は余り有り、攻むる者は足らず。攻めざるを以て之を攻むるは、攻むるの上なり。
-
孫子・勢篇勢に任ずる者は、其の人を戦わしむるや、木石を転ずるが如し。木石の性は、安ければ則ち静かに、危ければ則ち動き、方なれば則ち止まり、円なれば則ち行く。
-
言志四録・言志後録 第二百三十六条 兵法の下手処と著眼処先づ勝つ可からざるを為して、以て敵の勝つ可きを待つ。是れ其の下手の処なり。必ず全きを以て天下に争ふ。是れ其の著眼の処なり。之を校ぶるに計を以てして其の情を索む。是れ其の秘密の処なり。
-
言志四録・言志晩録 第九十七条 心胆を錬る兵家の心胆を錬ることを説くは、震艮の工夫と髣髴たり。
-
言志四録・言志録 第百八十一条 勢に因りて利導す人情の気機は、一定を以て求むべからず。之を誘へば勧み、之を禁ずれば遏む、順なり。之を導けば反つて阻み、之を抑ふれば益揚る、逆なり。是の故に駕馭の道は、当に其の向背を察し、其の軽重を審らかにし、勢に因りて之を利導し、機に応じて之を激励し、其をして自ら其の然る所以を覚えざらしむべし。此れを之れ得たりと為す。
-
孫子・形篇勝つべからざる者は守なり、勝つべき者は攻なり。守は則ち足らざればなり、攻は則ち余り有ればなり。善く守る者は九地の下に蔵れ、善く攻むる者は九天の上に動く。故に能く自ら保ちて勝を全うするなり。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る